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業界トレンド情報 第四十六弾 半導体の歴史をたどる―トランジスタから最先端プロセスまで

1.1947年、世界初のトランジスタの開発
半導体の歴史を語るうえで外せないのが、1947年にアメリカ・ベル研究所のジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックレーによって発明された「トランジスタ」の存在だ。
従来用いられていた真空管と比べて、トランジスタはより小型で低電力であり、耐久性も高かった。

ラジオや電話交換機などの通信機器が一気に小型化、高性能化かつ低コスト化したことはもちろん、その後の電子産業全体の進化を後押しする原動力となっている。
彼ら3名は1956年にノーベル物理学賞を受賞。半導体技術が21世紀の産業の基盤を形作るきっかけをつくったといえる。
2.集積回路(IC)の誕生と高度化
トランジスタが登場して十数年が経過した1950年代末から1960年代にかけては、「IC(集積回路)」が次なるブレイクスルーをもたらした。
1958年にはテキサス・インスツルメンツ(TI)のジャック・キルビーがICを発明。
半導体基板の上に複数のトランジスタや抵抗、コンデンサなどを一体化する技術が確立された。

ICの登場によって回路の集積度が飛躍的に高まり、コンピュータや電子計算機はさらに小型化と高速化を実現する。
1960年代後半には、アポロ計画で利用された宇宙船の誘導コンピュータにもICが使われ、月面着陸を支えた重要な技術となった。
その後、トランジスタの数が2年ごとに倍増するという「ムーアの法則」にしたがって、ICの集積度は指数関数的に向上を続けた。
ムーアの法則は、半導体産業におけるエンジニアリングの方向性を示す指標として今なお大きな影響力を持ち続けている。
3.マイクロプロセッサの誕生とパーソナルコンピュータの普及
1970年代前半には、世界初のマイクロプロセッサ「Intel 4004」が登場。1つのチップ上に演算装置(ALU)や制御回路などをすべて統合する技術が実現した。
これはコンピュータの心臓部ともいえる制御部分を大幅に小型化する革新的な出来事で、当時は計算機メーカーだけでなく、自動車産業などの産業界にも大きな影響を与えた。

その後、1970年代後半から1980年代にかけて、マイクロプロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ(PC)が普及し始める。
Intelの「8086」やMotorolaの「68000シリーズ」をはじめとする数多くのCPUが登場し、企業や家庭にコンピュータが浸透していった。
この時期にはDRAM(Dynamic Random Access Memory)やEPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)などのメモリ技術も急速に発展し、ハードディスクの大容量化と相まって、パソコンの性能は格段に向上していった。
4.スマートフォン時代とナノメートルプロセスへの突入
1990年代から2000年代にかけては、半導体の微細化がさらなる進歩を遂げる。
半導体チップの配線幅がミクロン(μm)からナノメートル(nm)の領域に突入し、ムーアの法則を追いかける形で、より集積度の高いデバイスが次々と誕生した。
IntelやIBM、TSMCなどの企業がリーダーシップをとり、製造装置メーカーも含めた業界全体が微細化競争を繰り広げる構図が定着していく。
その結果、スマートフォンやタブレットといったモバイル機器が誕生。
わずか数十年で「机の上の大型コンピュータ」を手のひらサイズに収めるまでの進化を遂げた。
また、通信技術の高度化やクラウドコンピューティングの普及と相まって、半導体はインターネットやAI、IoTなど、あらゆるデジタル産業の根幹を担う存在となっている。
5.最先端プロセスと今後の展望
近年では、2nmプロセス以下の実用化を目指す動きが活発化しており、Gate-All-Around(GAA)FETと呼ばれる新たなトランジスタ構造の採用など、トランジスタのさらなる縮小や高性能化が模索されている。
TSMCやSamsung、日本のRapidus(ラピダス)をはじめとする企業が大規模な投資を行い、各国政府も積極的な支援策を打ち出すことで、半導体の研究開発競争は依然として熾烈を極めている。
一方で、微細化が進むほど製造コストが急増する問題や、新素材の採用による技術的リスクも懸念される。
さらに、高度な半導体が軍事・安全保障上の戦略物資としての重要性を帯びる中、世界各国が自国の産業を保護・育成する動きも加速している。
こうした状況下において、半導体企業では性能追求と量産体制の構築、そして国際的な協調のバランスをとることが今後の大きな課題となるだろう。
安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「半導体の歴史をたどる―トランジスタから最先端プロセスまで」と題してアップさせて頂く。
1947年にアメリカ・ベル研究所の3人博士から生まれたトランジスタが、以降革新的な進化を続ける半導体歴史の幕開けとなる訳だが、この約80年間の時間でここまで進化が継続されている産業が他にあるだろうか?
トランジスタからICとなり、計算機・パーソナルコンピュータ(PC)・スマートフォンが次々に生まれ、通信技術の進歩もあり、世界中の情報が瞬時に掌で確認出来る、あり得ないような世の中が現在になっている。
私が社会人になった頃にWindowsやインターネットが出始めた訳だが、まさか映画で観たような空飛ぶクルマや人工知能も持った人型ロボットが当たり前に存在する時代がこんなに早く到来するとは夢にも思わなかった。
もっとも全てが半導体だけの進化によるものではないが、間違いなく半導体無しには暮らせない世の中になっているのは過言ではないと思う。
これからはAIが世の中を牽引していくことになると思われるが、AI○○と呼ばれる製品が身の回りにあふれることで、また新たな時代が来ることになるだろう。
半導体の微細化競争は益々激しさを増しながら企業間競争から国家間競争の時代に突入しているが、「ポツンと一軒家」や「キャンプ動画」等を観て癒される気持ちになるのは私だけだろうか?