TREND半導体業界トレンド情報

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業界トレンド情報 第五十弾  最新のゲーム機に使われる半導体とその市場について

業界トレンド情報 第五十弾  最新のゲーム機に使われる半導体とその市場について

1.ゲーム機の市場規模と成長見通し

世界のゲーム機市場は、ハードウェア性能の向上やクラウドゲームの拡大、AI技術の進展といった要因により大きな変革期を迎えている。
特に2024年から2025年にかけては、Nintendo Switch 2(以下、Switch 2)やPlayStation 5 Pro(以下、PS5 Pro)といった次世代機が相次いで発売され、競争が激化している。

これらの次世代機では、半導体技術の進化がコンソールの性能向上を支え、ゲーム体験そのものを変えつつある。
 
調査会社Precedence Researchによると、世界のゲーム機市場は2025年で約313.7億ドル(約4.6兆円)となる見込みだ。
さらに2034年まで年平均8.6%で成長し、2034年には649.2億ドル(約9.6兆円)に達すると予測している。

出所:Precedence Research

ゲーム機1台に占める半導体の原価比率は、ゲーム機によって異なるものとみられる。
TechInsightsの分解レポートでは、PS5 Proの場合でSoCが総製造コストの18.5%、メモリ(DRAM+SSD)が35%を占めるとしており、合計で53.5%と過半を占める計算となっている。

2.NVIDIAのカスタムSoCを採用したSwitch 2

任天堂は、日本や北米などで2025年6月5日にSwitch 2を発売した。
定価は4万9,980円(税込)。2017年に発売されたNintendo Switchの後継機に当たる(Switchに関しては、2019年に廉価版のSwitch Lite、2021年に有機ELモデルが発売されている)。 

Switch 2は予約開始時点から大きな人気を集めており、発売後も手に入りづらい状況が続いている。
メーカーによる徹底した転売への規制も話題になった。
任天堂は、2025年末までに2,000万台の出荷を目標に掲げる。

ディスプレイが7.9インチに大型化したほか、処理性能や解像度、映像出力性能が向上。
コントローラーがマウスモードにも対応可能となっており、本体にはチャット用のマイクも内蔵した。
ストレージも256GBに拡大しており、ゲームデータの保存容量が増加している。

Switchのほぼ全てのソフトをプレイできるほか、「マリオカートワールド」「ドンキーコング バナンザ」といった専用ソフトも遊ぶことができる。

出所:任天堂

プロセッサには、NVIDIAのカスタムSoC「T239」を採用。
8コアのARM Cortex‑A78Cと1536基のCUDAコアを備えたAmpere系GPUを統合した。
Samsung Electronicsの8nmプロセスを用いて製造されている。

また、レイトレーシング(光や影などをリアルに表現する技術)処理用ユニット「RT Core」を備えており、ハードウェアレイトレーシングが可能。
NVIDIA独自の解像度向上技術「DLSS(Deep Learning Super-Sampling)」もサポートした。

GPUはDLSS 3相当のフレーム生成に対応。
ドック接続時には最大4K/60fps描画が可能となっている。
DRAMにはSK HynixのLPDDR5X 12GB(2×6GB、128ビット)を採用した。

携帯モードで4266MT/s、据え置きモードでは6400MT/sで動作する設計となっている。
NANDフラッシュは、キオクシアやSK Hynixの256GB品を備えている。 

3.PS5 ProはAMDとソニーが共同開発したSoCを搭載

ソニーは、2024年11月7日にPS5 Proをグローバルで発売した。
定価は11万9,980円(税込)。

PS5の定価が72,980円(税込・ディスクドライブ非搭載モデル)なのに対して比較的高額なため、予約開始直後から賛否が分かれたものの、発売後は完売が相次いだ。

なお、PS5 Proは全てディスクドライブ非搭載(デジタルエディションモデル)となっており、ディスクドライブを利用する場合は別途購入する必要がある。

PS5 Proは、PS5と比べてグラフィック性能が向上したほか、ストレージ容量が2TBに拡大。
レイトレーシングとAI超解像技術の性能も向上した。
また、新たにWi-Fi 7に対応している。 


出所:ソニー

プロセッサには、ソニーと共同開発したAMDの「Viola SoC」を採用。
Viola SoCは、ピーク性能で16.7 TFLOPSを発揮する60CU構成の「RDNA 3」GPUや、8コア「Zen 2」CPUを備えた。
GPUにはAIアップスケーリング技術「PSSR」や改良型レイトレーシングユニットを組み込んでおり、4K/120Hzや8K映像出力が可能となっている。

DRAMは16GBのGDDR6を採用。また、OS専用として2GBのDDR5も搭載しており、ゲーム側で16 GBをフルに活用することができる。

4.今後の展望

スマートフォンと同じく、ゲーム機向けの半導体は急速な進化を遂げている。
今後もAI推論用NPUの内蔵や3D V-Cache技術の導入、さらには3nmプロセス採用といった技術進展が見込まれる。

クラウドゲームやポータブルPCの台頭により市場競争は激化しているものの、任天堂やソニーはいずれも独自SoCによるエコシステム強化を進めており、ゲーム機専用半導体に向けた開発・投資は今後も継続する見通しだ。

安部’s EYE

安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「最新のゲーム機に用いられる半導体とその市場」についてアップさせて頂く。

私自身ゲームと言えば一昔前のゲームコーナーでの遊びで興じた程度で全くのド素人だが、今回の記事を見てあまりにも大きな市場の規模と伸びに衝撃を受けた次第だ。

幸いか否か分からないが我が家は子供もあまりゲームとは関りが無く、これまでゲーム機自体を購入したことが無かったので、価格についても“おもちゃ”の想定しかしていなかったが、今やとんでもないことになっていたとは、、、子供に感謝をしなければ(汗)。

価格もさることながら、当然の如く機器に使われるデバイスの圧倒的な高レベルさにも、もう恐れ入りました!としか言いようがない状況だ。

今年の夏季連休中、私は大半の時間をアウトドアで費やしたが、流石の酷暑に終盤はリビングで映画鑑賞と洒落込んでみた。
充実感と言った意味では何とも言えないが、快適さでは比較にならないものであり、今後の屋外の暑さを考えると、当然屋内で過ごす時間が増えてくるのは至極当然のことだと思う。

その時間の充実度を上げる意味でも、「ゲーム市場」がターゲットになるのも理解出来るし、市場の規模や伸びについても納得である。

半導体産業に身を置くものとしては、人々の暮らしにおける利便性・快適さ・消費電力抑制等々、ありとあらゆる分野でお応えする役割があるのだと、改めて責任の重さを肝に銘じなければならない。

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