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業界トレンド情報 第二十三弾『2nmプロセスの国内量産化を目指すラピダス』

1.2nmプロセス量産に向けてラピダスが発足

経済産業省が2022年11月、2nmプロセス以下の次世代半導体の製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクト(開発費700億円)の採択先を「Rapidus(ラピダス)株式会社」とする旨を発表し、業界内で大きな話題となった。

ラピダスは、キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が出資したことで2022年8月に立ち上がった半導体製造企業だ。

三菱UFJ銀行以外の7社がそれぞれ10億円、三菱UFJ銀行が3億円と計73億円を出資している。
元東京エレクトロン社長の東哲郎氏が取締役会長に、元ウエスタンデジタルジャパン社長の小池淳義氏が代表取締役社長にそれぞれ就任した。

出所:経済産業省

出所:経済産業省

ラピダスは、2nmプロセス半導体の国内量産化を目指す。
2021年に2nmデバイスの試作に成功したIBMと連携して技術開発を進め、2025年前半には試作ラインを構築する計画だ。
量産開始は2020年代後半を予定している。

2022年度は、2nmプロセス技術の獲得に加えてEUV露光装置の導入への着手、短TAT生産システムに要する装置や搬送システム、生産管理システムの仕様策定、パイロットラインの初期設計実施などを進める予定とした。

なお、同社の量産技術実現に向けた研究開発拠点として、2022年にLSTC(Leading-edge Semiconductor Technology Center:技術研究組合最先端半導体技術センター)も発足している。

米国が半導体戦略に基づいて同様に設立予定の研究開発拠点・NSTC(National Semiconductor Technology Center)など、各国の関係機関と連携してオープンな研究開発を進める計画となっている。

出所:経済産業省

出所:経済産業省

2.FinFETからGAA FETへ

日本が国を挙げて2nmプロセスの量産技術立ち上げを目指す背景には、近年各国が半導体の自給率向上に向けた取り組みを進めていることに加えて、現在の最先端プロセスが従来のFinFETからGAA(Gate All Around)FETへと転換する過渡期にあることが挙げられる。

FinFETは、チャネルの側面と上面の3面をゲートが囲む構造を採用したトランジスタを指す。
2011年にIntelが22nmプロセスMPUの量産に初めて採用したもので、既存のトランジスタと比較してリーク電流を削減できる点が特長となっていた。

しかし、3nmプロセス以下にまで微細化が進むにあたっては、FinFETであってもリーク電流の大きさが課題となる。
このため、Samsung ElectronicsやTSMC、Intelといった先端デバイスメーカーは、GAA FETへの移行を進めている。

GAA FETとは、電流が流れる4面のチャネル全てをゲートが囲む構造を採用したトランジスタだ。
ゲートの接触面が3面から4面に増えたことで、電流をより細かくコントロールすることが可能。
チャネルの調整能力を最大化することで、電力効率を大きく向上させる仕組みとなっている。

出所:Lam Research

出所:Lam Research

GAA FETは、Samsung Electronicsが他社に先駆けて2022年9月に量産を開始した。
同社のGAA FETは、「MBCFET(Multi Bridge Channel FET)」と名付けられており、3nmプロセスに適用されている。
量産開始当初は、歩留まりの面でかなり苦戦を強いられていたようだが、その後は一定程度改善した模様である。

一方で、TSMCは、3nmプロセスにおいてもFinFETの使用を継続する方針で、2025年に製造開始予定の2nmプロセスで初めてGAA FETを適用する計画となっている。
また、Intelも2024年までGAA FETを適用しない方針だ。

3.現状と課題

世界での先端デバイス開発が以上のような状況となっている一方で、日本の工場における最も微細な量産レベルのノードはルネサス エレクトロニクスの40nmプロセスに留まっており、先述の先端デバイスメーカーと比較すると10年相当の遅れが生じている。

台湾のTSMCが熊本に量産工場を立ち上げる予定となっているが、そちらも現状では22/28nmプロセスの製造に留まる計画となっている。

このため日本では、GAA FETへの移行の過渡期である現在を次世代半導体参入へのラストチャンスと捉えて、国を挙げて異次元の取り組みを進める方針とした。
現状で世界最先端のデバイスメーカーに位置づけられているTSMCやSamsung Electronicsでも、2nmプロセスの量産化は2025年まで実現しない見込みとなっている。

もし日本が2020年代後半に同プロセスの量産化に実現したとすれば、現状の10年遅れを一気に縮めることが可能となる。

出所:経済産業省

出所:経済産業省

一方で、現状では課題も山積しているのが実際のところだ。
技術的ハードルや高度人材確保の困難さはもちろん、多額の投資に見合ったリターンが得られるのかという点も重要となる。

ラピダス代表の小池氏は、量産に向けて技術確立に2兆円、生産ラインの構築に3兆円と計5兆円規模の投資が必要との見解を明らかにしている。
また、それだけの投資を実施して量産工場を立ち上げられたとしても、以後も多額の設備投資が毎年必要となる。

最先端プロセスの製造のみを対象とするため、減価償却を終えた製造装置によるレガシープロセスの製造で利益を得ることもできない。
このため、量産開始当初の大幅な利益化は難しいことが予測される。

加えて、現段階ではターゲットとなるアプリケーションが明確になっていない。
このため、2nmプロセスが量産可能になったとしても、量産ラインがどれほどの稼働率を実現できるのかは未知数となっている。

かつては半導体で世界最先端を走っていた日本。
さまざまな課題を乗り越えて、ラピダスの成功により再び半導体大国となる日が来るのを願ってやまない。

安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「2nmプロセスの国内量産化を目指すラピダス」と題してアップさせて頂く。

記事にある通り、国内における半導体微細化において失われた10年間を取り戻すべく、世界最先端となる2nmプロセス以下の次世代半導体の製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトを「Rapidus(ラピダス)株式会社」にて行うことが発表された。

これまでもこの業界トレンド情報にて、国を挙げての半導体産業の在り方や国家戦略としての具現性加速等の要望について投稿してきたが、今回の2nmプロセス量産化については正直相当に驚いた次第だ。

現時点での国内で最も微細な量産プロセスは40nmなので、一気に20分の1の微細化をこれから数年で目指すことになる訳だが、国を挙げて本気で取り組むのであれば非常に興味深いことである。

基本となるプロセスは米国IBM社の技術を活用することのようだが、同社の技術ライセンスフィー契約がどうなっていて、更に次の世代となるBeyond 2nmについて同社との関係継続がどのように定義されているのかは不明だが、当面の主導権はIBM社が握ることになると思われる。

半導体において世界最先端レベルに返り咲くラストチャンスと位置付けられているが、Rapidusを母体とする事業に対し、数兆円規模と言われる資金を国がどこまで支援するか、また複数の企業が参加する事業運営をどうやって管理し継続発展させるか、更にはそもそも技術者をどうやって集めるか等々、解決すべき課題は多い。

2nmプロセス以下の最先端の半導体を製造し、この最先端チップを自国でフルに使いこなしてこそ、真の意味での“半導体立国ニッポン”返り咲きになると思う中、出口戦略についても早い段階で議論されることを期待したい!

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