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業界トレンド情報 第二十九弾『IPM(インテリジェントパワーモジュール)の最新動向』
1.IPMとは?
パワーデバイスは、ディスクリートとパワーモジュールの2種に分類できる。
ディスクリートはパワー素子を単体でパッケージングしたもので、パワーモジュールは複数のパワー素子を組み合わせて1パッケージに集積したものだ。
パワーモジュールは、必要な機能を組み合わせることで最適化が図られており、機器の効率や信頼性、放熱性などの向上に寄与する。
今回紹介するIPMは、このパワーモジュールの1種に分類される。
IPMとは、インテリジェントパワーモジュールの頭文字を取ったものだ。
IGBTやパワーMOSFETといったパワー半導体に、駆動回路や保護回路を備えたICを組み合わせた高機能モジュールを指す。
これらの回路を組み込んでいることが、通常のパワーモジュールと異なる点となっている。
あらかじめICを組み込んでいるため、周辺回路の設計を簡素化することが可能。
また、ICを別で用意する場合と比べて基板面積を縮小できるため、機器全体の小型化に寄与する。
IPMは、1990年代初頭に初めて実用化された。
以後、モーター制御を用いるエアコンや冷蔵庫といった家電製品や自動車、電車、太陽光発電や風力発電などのパワーコンディショナーといった用途に採用されている。
2.IPMの市場規模予測
調査会社のIMARCが発表した調査結果によると、世界のIPM市場は2022年に19億ドルに達したという。
さらに、2023年から2028年にかけて7.3%の年平均成長率(CAGR)で市場が拡大し、2028年には30億1,000万ドルに達すると予測した。
同社は、特に再生可能エネルギープラントやEV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド車)におけるIPMの採用拡大を成長要因に挙げている。
再生可能エネルギー関連では、オンショアおよびオフショアの風力タービンインバーターや太陽光発電インバーターなどに用いられており、今後も採用が拡大するものとみられる。
出所:IMARCが公表した調査結果を基に作成
その他では、電磁調理器や無停電電源装置(UPS)、高周波溶接機、モータードライブなどのニーズが近年高まっていることも、IPMの市場拡大の要因に挙げられるとした。
3.IPMの製品例
IPMは、三菱電機や富士電機、ローム、サンケン電気といった国内パワー半導体メーカーや、インフィニオンテクノロジーズ、オン・セミコンダクター、STマイクロエレクトロニクスといった海外パワー半導体メーカーなどが手掛けている。
三菱電機は、「L1」「V1」「S1」「G1」といったIPMシリーズに加えて、家電など小容量のインバーター機器向けにトランスファーモールド外形を採用したDIPIPM、基板実装が容易な表面実装パッケージを採用したSOPIPMも製品ラインアップに揃えている。
また、シリコン以外にSiC-MOSFETを用いた産業用や家電用のIPMも製品化。
家電用の600V/15A・25A フルSiC DIPIPMは、SiC-MOSFETを用いたことでオン抵抗が低減した。
同社従来品と比較して、電力損失が約70%低減している。
P側電源用ブートストラップダイオードや温度情報出力といった機能も搭載した。
家電用600V/15A・25A フルSiC DIPIPM 出所:三菱電機
その他では、サンケン電気とSTマイクロエレクトロニクスが、高耐圧の産業用・自動車市場向けIPMを共同で開発している。
両社は、市場調査から商品企画、製品開発までを共同で実施。
3kW超の用途を対象としたSTマイクロエレクトロニクスのIPM「SLLIMM High Power」シリーズとして、共同開発した製品を提供している。
LLIMM High Power IPM「STGIK50CH65T」 出所:STマイクロエレクトロニクス
安部’s EYE
今回のトレンド情報は、「IPM(インテリジェントパワーモジュール)の最新動向」についてアップさせて頂く。
本文中にあるが、IPMは1990年初頭に初めて実用化されて以降、モーター制御を用いるエアコンや冷蔵庫といった家電製品や自動車、電車、太陽光発電や風力発電などのパワーコンディショナーといった用途に採用されている。
従来のパワーモジュール内に、駆動回路や保護回路を備えたICを組み込むことで、周辺回路の設計を簡素化出来るため、機器全体の小型化に寄与可能となる事が特徴である。
調査会社によると、世界のIPM市場は2023年から2028年にかけて7.3%の年平均成長率(CAGR)で拡大し、2028年には30億1,000万ドルに達すると予測している。
今後のカーボンニュートラルに対しても重要となるキーデバイスであり、組込みや小型化と言った分野で強みを持つ日本国内でも更なる拡大を期待したいところだ!
当社においても、2023年末より同製品の量産化を予定しており、カーボンニュートラル推進に少しでもお役に立てるよう全社一丸で頑張って行きたい。