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業界トレンド情報 第二十八弾『AIの急速な進化を支えるNVIDIA GPU』
1.社会に大きな衝撃を与える生成AI
このところ、生成AI(Generative AI)が大きな注目を集めている。
生成AIとは、文章や画像、音声、プログラムコードなどを自動で生成する人工知能を指す。
特に、2022年11月にOpenAIが公開した文章生成AIチャットボット「ChatGPT」は、自然な文章や対話性に優れた性能から世間に大きな衝撃を与えた。
ChatGPTは大規模言語モデル「GPT3.5」を基に構築したもので、2023年3月にはさらに性能が改良された「GPT4」も選択可能となっている。
OpenAIと米ペンシルバニア大学の研究者が発表した論文では、ChatGPTなどの大規模言語モデルを用いたAIにより、米国の労働者の80%がタスクの10%に影響を受けると推論した。
中でも19%の人は、タスクの50%に影響を受ける可能性があるとしている。
また、「Stable Diffusion」や「Midjourney」などの画像生成AIも進化が目覚ましい。
2023年5月には、Stable Diffusionを開発したStability AIが新たな画像生成AI「DeepFloyd IF」をリリースした。
画像内の文字表示などの性能が改善している。
2023年3月には、オーバーサイズの白ダウンを着用したローマ法王の写真がTwitter上で広く拡散したが、これはMidjourneyで生成されたフェイク画像(ジョーク画像)だった。
あまりの出来の良さに、フェイク画像と知らずに拡散してしまうケースも多く、性能の高さと相まってその危険性も取り沙汰されている。
このように、急速な性能の向上により社会に大きなインパクトを与えている生成AIだが、これらの演算を可能にしているのがGPUだ。
2.GPUで圧倒的なシェアを占めるNVIDIA
GPUはGraphics Processing Unitの略語であり、その名の通り画像処理に必要な演算処理を行うチップを指す。
3Dゲームでリアルタイムな3Dグラフィックス処理を行うなど、大量のデータを高速で計算する能力に長けている。
GPUは、コアが内部で連携動作することによる並列処理が可能で、行列演算のスピードはCPUの10倍超とも言われる。
このため、画像処理以外にもビッグデータやAIなどに多く用いられることとなった。
今回取り上げたさまざまな生成AIも、このGPUの処理能力なしでは実現しなかったといえる。
特に、大規模な生成AIを動かすには、数千個のGPUが必要になると言われている。
実際に、OpenAIとMicrosoftが大規模AIモデルの学習用に構築したスーパーコンピュータには、1万個ものGPUが搭載された。
このように、生成AIの発展の鍵を握っているGPUは、NVIDIAやIntel、AMDといった企業が提供している。
中でも、圧倒的なシェアを有しているのがNVIDIAだ。
市場調査会社のJon Peddie Researchが発表したところによると、2022年10〜12月のPC向けディスクリートGPU市場ではNVIDIAが85%ものシェアを占めた。
残りはAMDが9%、Intelが6%となっている。
NVIDIAは、株価においても目覚ましい躍進を遂げている。
下のグラフは、3年前の株価を基準値(100.0%)としてその後の推移を描写したものだ。
NVIDIAは、AppleやGoogle、Amazon、Metaと比較して、2023年1月以降に際立った伸びを見せた。
AIに使用されるハイエンドGPU「H100」の売上が好調だったことなどが、株価高騰の要因となっている。
3.生成AI向けの展開に注力するNVIDIA
このような生成AIでのニーズを受けて、NVIDIAも積極的に生成AIに向けた商品・サービス展開を開始している。
2023年3月に開催した技術カンファレンス「GTC 2023」では、生成AIに関する発表を行った。
「NVIDIA AI Foundations」は、独自の生成AIモデルの構築や運用を可能とするクラウドサービスだ。
大規模言語モデルを用いた生成サービス「NeMo」と、画像や動画、3Dモデルの生成サービス「Picasso」で構成される。
NeMoでは、80億〜5,300億のパラメータを有するさまざまなサイズのモデルを使用可能。
情報検索によりリアルタイムの独自データを用いたカスタマイズが可能で、用途に応じた生成AIアプリケーションを構築できる。
また、Picassoも同様にカスタマイズが可能で、用途に合わせたビジュアルコンテンツを生成するアプリケーションを構築できる。
これらに加えて、生成AI向けのデータセンター用アクセラレーター「NVIDIA L4」および「NVIDIA H100 NVL」も発表した。
NVIDIA L4は動画や静止画の生成AI向け製品となっており、コンパクトかつ薄型である点を特長とする。
同社発表によると、動画のAI処理では小型ながらCPUと比較して120倍の性能に達したという。
また、NVIDIA H100 NVLは大規模言語モデル向けの製品となっている。
2基のGPUをNVLinkで結合した構成となっており、高速なメモリを要する言語モデル向けにHBM3メモリを搭載した。
Citiグループは、ChatGPTの急成長によりNVIDIAが年間30〜110億ドルの売上高を得る可能性があると推計している。
NVIDIAの2022年1月期、2023年1月期の年間売上高がともに約270億ドルだったことを考えると、1つのサービスがもたらすインパクトとしては極めて大きいことが分かるだろう。
OpenAI以外にもさまざまな企業がNVIDIAのGPU確保に奔走しており、「GPU危機」などとも称される現在の状況は今後も続くものとみられる。
安部’s EYE
今回のトレンド情報は、「AIの急速な進化を支えるNVIDIA GPU」についてアップさせて頂く。
生成AIチャットボット「ChatGPT」については、最近話題になっており既に利用した方も多くいるのではないだろうか?
私も実際に使ってみたが、「ChatGPT」による回答の出来栄えには驚かされる。
ちょっとした文章は勿論のこと、説明会等のレジュメや所要時間も非常に的を得た答えを出してもらえるので、実際の業務においても適宜使わせてもらっている。
今後多くの方が使用することで益々学習機能が高まり賢くなることで、更に使用頻度が高まり便利になっていく、、、便利なツールであることに違いはないが、いよいよ映画の世界が間近に迫ってきたようで少しだけ恐怖を感じるのは私だけだろうか?
こんな生成AIを可能としたのがGPUである。
元々は3Dゲームでリアルタイムな3Dグラフィックス処理に用いられたデバイスであるが、並列処理を強みとする機能を大量データの演算処理に適用することでAIに展開させたことが凄いことだ!
更にはこのGPU市場において圧倒的なシェアを有しているのがNVIDIAである。
記事にもあるが同社の株価の躍進も目覚ましく、いわゆるGAFAを凌ぐ勢いである。
世界で圧倒的な強みを誇っている企業は、各社とも自社の強みを徹底的に磨き上げて、その強みを継続的なイノベーションで確固たる地位まで築き上げているように思える。
今こそ原点に立ち返り、自社の強みは何なのか?自社がやりたいことは何なのか?を問い直してみるのも必要な気がする。