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業界トレンド情報 第二十七弾『究極のパワー半導体物性をもつダイヤモンド半導体』

業界トレンド情報 第二十七弾『究極のパワー半導体物性をもつダイヤモンド半導体』

1.半導体への応用が期待されるダイヤモンド

ワイドギャップ半導体は、次世代パワーデバイス材料として近年注目を集めている。
ワイドギャップ半導体とは、バンドギャップ(価電子帯の電子と伝導帯の電子とのエネルギー差)が、半導体に広く用いられているSi(シリコン)と比較して高いものを指す。

バンドギャップが大きいと絶縁破壊電界強度や飽和ドリフト速度が高くなり、高耐圧化や低損失化、スイッチングスピードの高速化、ひいてはデバイスの小型化などが可能となる。

SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などが代表的で、前者のバンドギャップが3.26、後者が3.39となっている(Siは1.11)。

これらのワイドギャップ半導体の中でも、究極のパワー半導体材料と称されるのがダイヤモンドだ。
ダイヤモンドは単一の炭素原子のみで構成される物質だが、炭素原子同士が「共有結合」と呼ばれる構造で強力に結びついている。
モース硬度が10となっており、世界一硬い石として一般的にも知られている。

ダイヤモンドはバンドギャップが5.47で、Siはもちろん、先述のSiCやGaNと比べても高い。

また、熱伝導率が21.3W/cmKで、物質の中で最高レベルとなっている(SiCの4倍、GaNの10倍)。

さらに、絶縁破壊電界が半導体の中で最高レベルの10.0MV/cmとなっているほか、電子移動度も2,200cm2/Vsで、SiやSiC、GaNを超える値となっている。

半導体材料としての実用化が期待されているのは、以上のような優れた特性を有しているためである。

出所:東京工業大学

2.ダイヤモンド半導体における課題と研究成果

前章に記載したように、非常に優れた物性を有するダイヤモンドであるが、未だ実用化には至っていない。
現状で研究開発レベルに留まっているのは、実用化にあたって多くの課題を有しているためである。

課題としては、まずダイヤモンドウエハの高品質化や大口径化が困難なことが挙げられる。

また、デバイスの電流値が理論予想値と比較して低く、デバイスが非常に短寿命となりうることや、非常に硬く化学的にも安定しているため、研磨や加工が困難なことも実用化への障壁となっていた。

ところが近年、これらの課題解決に寄与する研究成果が相次いでいる。

例えば2021年9月、アダマンド並木精密宝石が直径2インチ超(55mm)のダイヤモンドウエハ作製に成功したと発表した。

同社は、佐賀大学との共同研究のもと、階段状のサファイア基板にダイヤモンドを成長させる独自の「ステップフロー成長法」を作製手法に用いている。

さらに2022年4月には、同サイズのダイヤモンドウエハの量産技術を開発したと発表した。

結晶成長での窒素の混入を極力抑えることで、純度の高いダイヤモンドウエハの量産に成功している。

なお、同社発表によると、同ウエハ1枚でブルーレイディスク10億枚分のデータが保存可能で、全世界で1日に流通する全てのモバイルデータ量に相当するという。
2023年中の製品化を予定している。

開発した2インチ超のダイヤモンドウエハ 出所:アダマンド並木精密宝石
開発した2インチ超のダイヤモンドウエハ 出所:アダマンド並木精密宝石

また、佐賀大学は2023年4月、ダイヤモンド半導体のパワー回路を開発したと発表した。
同発表によると、世界初の成果だという。

同回路では、ターンオン時間およびターンオフ時間がいずれも10ナノ秒弱で、高速スイッチング動作が可能となっている。
また、ターンオン損失が55.1ピコジュール、ターンオフ損失が153.2ピコジュール(ピコジュールは1兆分の1ジュール)と極めて低い値となった。

さらに、ダイヤモンド半導体を用いたパワー回路では以前より素子劣化の早さが懸念されていたものの、今回開発した回路では190時間連続測定しても特性劣化が見られなかった。

同大学は2021年にも、ダイヤモンド半導体デバイスで世界最高(同大学発表による)の出力電力(875MW/cm2)、出力電圧(3659V)を達成している。
今後は、さらに高電圧での動作や過酷な動的特性試験を実施することで、実用化に向けた研究開発を加速させる意向となっている。

これらに加えて、研磨技術の開発も進んでいる。
金沢大学は2021年4月、ダイヤモンド向けに機械的ダメージフリーの平坦化技術を開発したと発表した。

同技術は、平坦なニッケル基板とダイヤモンド基板を接触させてアニール処理(熱処理)を行うことで、ダイヤモンドの凸部分のみをエッチングするものだ。
ダイヤモンド表面に機械的なダメージが入りやすい従来の研磨手法(スカイフ研磨)と異なり、表面を傷つけずに平坦化できる。

ダイヤモンドウエハの平坦化技術のメカニズム 出所:金沢大学

このように、近年はダイヤモンド半導体の課題解決に資する研究が多く行われており、実用化に向けた市場の期待は高まっている。
今後も各社、各研究機関による技術開発動向が注目される。

安倍’s EYE

安倍’s EYE

今回のトレンド情報は、「究極のパワー半導体物性をもつダイヤモンド半導体」についてアップさせて頂く。

ダイヤモンド半導体については、以前より素材としての魅力は謳われていたが、近年になり一気に実用化に向けた研究~成果が出始めて来た。

記事にもあるが、2インチサイズのダイヤモンドウェハ1枚でブルーレイディスク10億枚分のデータが保存可能で、全世界で1日に流通する全てのモバイルデータ量に相当するといい、これが2023年度中に製品化されると書かれている。

何とも凄いことで、これが日本の企業主導で進められているとは、喜ばしい限りだ!

更にダイヤモンド半導体のパワー回路登場も実現が近づいており、圧倒的な消費電力削減への寄与についても見えてきたことは、カーボンニュートラルに向けての期待も高まるばかりだ。

今回の国産の技術が、我が国の半導体復権、更には技術立国ニッポンの起爆剤に繋がればと強く願うばかりだ!

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