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業界トレンド情報 第二十六弾『VRヘッドセット/ARグラス(スマートグラス)の最新動向』
1.VRヘッドセットの動向
VR(仮想現実)ヘッドセットは、近年大きな注目を集めている。
VRヘッドセットとは、仮想空間に人間の動きを反映させることで、あたかも現実のように仮想空間での映像を楽しめるものを指す。
なお、VRヘッドセットには、現実世界の風景を維持しながら、一部に仮想の映像を反映させられるAR(拡張現実)機能を有するものも多く存在する。
ARに特化したデバイスは、次の章でスマートグラスとして記載する。
VRヘッドセットは、Meta(旧Facebook)の「Meta Quest 2」やソニーの「PlayStation VR」などが市場を牽引している。
調査会社のIDC Japanによると、2022年の国内出荷台数は対前年比1.6%増の30万台となった。
2022年8月に、製造・出荷コストの増大を受けてMeta Quest 2が値上げされたことなどが販売台数に影響したものの、前年と比較して微増となっている。
VRヘッドセット「Play Station VR2」が2023年に発売されたことや、「Meta Quest 3」も同年に発売を予定されていることなど、VRヘッドセット市場は今後も拡大することが予測されている。
さらに、これらに加えて最も市場の期待を集めているのが、Appleが2023年6月に開催した「WWDC 2023」(Appleの世界開発者会議)にて発表した「Apple Vision Pro」だ。
なお、AppleはVR/ARヘッドセットという言葉を用いず、「空間コンピュータ」と称している。
Apple Vision Proは、既存の主なヘッドセットと異なり、外付けバッテリーを採用する。
現状のヘッドセットは、装着時の重量が課題の一つとなっているため、バッテリーを外付けにすることで本体が軽量化されれば大きなメリットとなりうる。
また、虹彩認証や2,300万ピクセルのOLEDディスプレイ、ハンドコントローラ不要の操作体系などを採用した。
これらに加えて、Macとシームレスに接続することで、Macの外部モニターとしても使用可能だ。
Meta Quest 2などでもPCやMacとの接続は可能だったが、別途アプリを立ち上げる必要があり時間を要していたほか、接続が不安定なことが多かった。
Apple純正のヘッドセット標準機能としてMacとの連携が可能となることで、既存のMacユーザーに強く訴求するものと思われる。
まずは米国にて、2024年上半期に販売を開始する予定となっている。
価格は約3,499ドル(約49万円)となった。
一般の消費者にとっては高価で手が出にくい可能性があるが、第2世代以降に廉価版をリリースする計画も一部で報じられている。
2.ARグラス/スマートグラスの動向
スマートグラス(ARグラス)とは、レンズ部分のディスプレイにさまざまなデジタルデータを表示できるメガネ型のウェアラブルデバイスを指す。
スマートグラスは、2012年にGoogleが立ち上げた「Google Glass」の開発プロジェクトで一躍市場の関心を集めた。
Googleは、2013年に開発者向けのGoogle Glassプロトタイプを発売し、2014年には一般消費者向けにも早期導入プログラムを開始するなど、スマートグラスの先駆者として期待されていた。
しかし、Google Glassにカメラが搭載されていたことから、プライバシー侵害や映画館などで使用する際の著作権侵害などが問題となり、一般層には浸透しなかった。
このため、産業用途に戦略を切り替え、現場作業員向けの「Glass Enterprise Edition」を展開していたが、2023年3月に市場からの撤退を発表している。
一方で、スマートグラスはその後も開発や上市が継続している。
2022年のスマートグラスの国内出荷台数は、IDC Japanによると対前年比102.7%増の4万台と大きく増加した。
「Nreal Air」や「Rokid Air」などの消費者向けデバイスが好調となっている。
Nreal Airは、スマートフォンやPC、ゲーム機などとUSBで接続することで、グラス内に大きく表示されるスクリーンを使用した動画視聴やゲームプレイができるデバイスだ。
ミラーリング機能を用いることで、スマートフォンの画面そのものも表示できる。
重量は約79gと軽く、価格は45,980円。
Amazonでの購入に加えて、KDDIやNTTドコモ、ソフトバンクを介して購入することも可能となっている。
カメラは搭載していない。
その他、直近の開発動向としては、NTTエレクトロニクスやQDレーザ、TDKが「網膜直接投影型スマートグラス」のプロトタイプを公開している。
RGB光源から照射した光線をミラーで反射させて、網膜に直接投影させる仕組みとなっており、近視や遠視の人でもメガネやコンタクトレンズを装着せずに映像を楽しめる点が特長だ。
QDレーザがスマートグラスを、TDKがフルカラーレーザー光源モジュールを、NTTエレクトロニクスがPLC型RGBカプラチップをそれぞれ開発した。
現状はプロトタイプのため、重さや大きさの点で既存のスマートグラスに劣っているが、同社は今後も小型化、軽量化に向けて開発を継続するという。
2025年の販売開始を目標としている。
安部’s EYE
今回のトレンド情報は、「VRヘッドセット/ARグラス(スマートグラス)の最新動向」と題してアップさせて頂く。
スマートグラスなるものが、どのような製品であるかについては凡そご存じの方も多いと思われるが、まだまだ一般的な普及については伸びしろがあるものである。
これまでのスマートグラスは、ゲーム機等に接続しての使用用途に限られた感が強かったが、本年6月にAppleが発表した「Apple Vision Pro」により一気に注目度が高まっている。
今回の「Apple Vision Pro」はヘッドセットという言葉を用いず、「空間コンピュータ」と称していることから、また新たなトレンドを巻き起こす商品になる事は必至と思われる。
前回の記事に挙げた「メタバース」もそうであったが、いよいよVR(仮想現実)/AR(拡張現実)の世界が急速に迫って来ていると認識すべきだろう。
私個人としては、スマートグラスに触れる機会も興味もこれまでは無かったが、少なくとも近いうちに一度は体験しなければと少しだけ焦りを感じてきているが、皆さんはどうだろうか?