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業界トレンド情報 第九弾『世界各国での半導体における国家戦略【後編】EU・米国・日本』

業界トレンド情報 第九弾『世界各国での半導体における国家戦略【後編】EU・米国・日本』

1.はじめに

前回は「世界各国での半導体における国家戦略(前編)」と題し、中国や韓国における自国半導体産業の発展に向けた国家戦略を紹介した。

今回は後編として、米国、EUおよび日本における国家戦略について取り上げる。

2.米国

米国では、超党派の議員が2020年6月に「CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors) for America」や「American Foundries Act of 2020 (AFA)」といった法案を提出した。
投資額は総額370億ドルの見込となっていた。

その後2021年3月には、米バイデン大統領が先の法案を上回る500億ドルを米国半導体産業の国内生産に向けて投じると発表している。

さらに、米上院は2021年6月、5年間で520億ドルを半導体の研究開発や量産に向けて投じるとした超党派法案「U.S. Innovation and Competition Act(米国イノベーション・競争法案)」を可決した。
先端技術開発などに多額を投じるほか、自動車や国防用途向けのレガシーチップの製造にも20億ドルを投資する内容となっている。

これらの政府による動きと相まって、半導体企業の動きも活発化している。
Intelは2021年3月、約200億USドルを投じて米アリゾナ州のオコティージョに2つの新工場を建設すると発表した。

7nm以降の最先端プロセスを用いる予定で、ファンドリ事業を含めた製造を担う。
2024年以降の稼働開始を計画している。

また2021年5月には、35億USドルを投じて既存の米ニューメキシコ州・リオランチョ工場の敷地内に新たにパッケージング工場を建設すると発表した。

今後3年間で700名の新規雇用を見込んでおり、3Dパッケージング技術を用いた製造を担う予定となっている。

米リオランチョ工場 出典:Intel

また、自国企業以外でも、台湾のTSMCが米アリゾナ州にて5nmプロセス製造を担う300mm新工場を建設すると発表している。投資規模は100億ドル超となる見込である。さらに、韓国のSamsung Electronicsも米テキサス州に3nmプロセス対応の新工場建設を検討中と一部で報じられている。

3.EU

EUにおいても、半導体の設計や製造の多くを海外に外注していることへの危機感が高まっている。

2021年3月には、デジタル技術の向上を図る「Digital Compass」計画を発表した。
その中で、同地域の世界に占める半導体供給シェアを現状の9%から2030年に20%に引き上げる目標を打ち出している。

今後2〜3年間で半導体を含むデジタル分野に1,350億ユーロ(約18兆円)以上を投資する模様である。

さらに2021年9月、欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen氏が「European Chips Act(欧州半導体法)」を策定すると発表した。

2021年7月に設立された欧州半導体アライアンス「European Alliance on Semiconductors」を基盤とするもので、半導体に関する研究や半導体の生産能力強化、国際協力・連携に向けたフレームワーク構築などを進めるものとなる。

半導体の研究機関としては、ベルギーのimecやフランスのCEA-Leti、ドイツのFraunhoferなど大型の先端技術研究所が欧州に位置している。
EUでは今後、これらを活用した取り組みを促進する。

ベルギーのナノテクノロジー研究機関imec 出典:imec

また、半導体生産に関しては、先述のように世界に占める半導体供給シェアの引き上げを目指すほか、将来的には2nm以下の最先端プロセスを製造可能なメガファブ建設を支援する。

一方で、現状でのEU内の生産能力を鑑み、国際協力・連携に向けたフレームワークの構築も進める。
一企業、一地域に依存しない安定的なサプライチェーンの構築を目指す。

4.日本

日本でも、第六弾『経済産業省、半導体やデジタル産業の政策の方向性』で紹介したように、国を挙げて半導体の生産基盤強化を進める方針となっている。

2021年11月には、「半導体・デジタル産業戦略検討会議」の第4回において「半導体産業基盤緊急強化パッケージ」を示した。
ステップ1としてIoT用半導体生産基盤の緊急強化を、ステップ2として日米連携による次世代半導体技術基盤の確立を、ステップ3としてグローバル連携による将来技術基盤を進める内容となっている。

半導体産業基盤緊急強化パッケージのイメージ 出典:経済産業省 https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2111/16/news079.html

2030年時点で、日本半導体企業の売上高合計を約13兆円とする目標を掲げた。
2020年時点では合計約4兆5,000億円であるため、10年で3倍弱もの規模に成長する計画となっている。

また、2021年12月には、先端半導体工場の新設や増設を支援するための関連法改正案を閣議決定した。
台湾のTSMCがソニーグループと共同で熊本に新設する工場が認定第1号に該当する見込で、4,000億円規模の補助金が同工場に向けて支払われるものとみられる。

第六弾『経済産業省、半導体やデジタル産業の政策の方向性』でも述べたように、現状での半導体向け政府支援は、他国と比較して比較的小規模なものとなっている。

経済産業省の資料では、「他国に匹敵する支援とそれを支える法的枠組みを構築し、複数年度にわたる継続的な支援を行う」との記載もみられるため、今後半導体産業の活性化につながる強力な施策が発表されることを期待したい。

安倍’s EYE

安倍’s EYE

今回の記事は、「世界各国の半導体における国家戦略(後編)」として、米国、EU及び日本に関する情報をアップさせて頂いた。

記事にある通り、米国では5年間で520億USドルを国家資金として投下、EUでは2~3年間に1,350億ユーロ(約18兆円)との巨額な資金投下がなされると書かれている。
前編の中国や韓国でも半導体に対する資金投下は青天井となっており、それほどまでに世界各国が半導体産業への注力を加速している。

一方、我が国日本においては、各国内企業の売上高目標は掲げられているが、残念ながら国家予算投下の金額規模や時期等は明確化されていない。

1分1秒でも早い時期での超党派法案の成立が為されなければ、世界における“負け組”になってしまうのではないだろうか。
官民一体となった取り組みの加速を願うのみだ!

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