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業界トレンド情報 第九弾【前編】『世界各国での半導体における国家戦略』

業界トレンド情報 第九弾【前編】『世界各国での半導体における国家戦略』

1.自国生産能力の確保を急ぐ各国

半導体産業は国をまたいだグローバルな産業として広く認知されており、台湾で前工程を、中国で後工程を担当した米国企業の半導体製品が日本に販売されるといったケースも珍しくない。

一方で、近頃の半導体不足などを受けて、製造を他国に依存することのリスクが顕在化している。
このため、半導体産業において一定の規模を有する国は、自国内の半導体生産能力の確保に向けた戦略を次々に発表し始めている。

今回は、「世界各国での半導体における国家戦略(前編)」と題して、中国および韓国における自国半導体産業の発展に向けた国家戦略を紹介する。

2.中国

中国では、スマートフォンなどの先端電子機器に用いる半導体の海外依存がかねてより課題となっていた。

そこで、半導体の自給自足体制を確立すべく、2014年にIC産業の発展方針を規定した「国家集成電路産業発展推進綱要」を、2015年に半導体の国内自給率を2020年までに4割、2025年までに7割に引き上げるとする数値目標を定めた「中国製造2025」を発表した。

2014年には国家IC産業投資ファンド運営会社を設置しており、これまでで合計で5兆円を超える半導体関連技術への投資を実施している。
また、北京や武漢、上海、湖北、深圳などでは地方政府による半導体関連向け基金も立ち上がっており、これらも合計で5兆円超の規模となっている。

特に武漢では、半導体メーカー・紫光集団の子会社として新たに発足したYMTCが2016年にNANDフラッシュの生産拠点建設に着手しており、2017年に竣工、2019 年に64層 3D NANDフラッシュの量産を開始した。
現在では128層品も量産している。

親会社の紫光集団は、債務超過により2021年7月に同グループの破産および再編を裁判所に申請しているが、YMTCは製造を継続している。

YMTCの第3世代 QLC 3D NANDフラッシュ「X2-6070」
YMTCの第3世代 QLC 3D NANDフラッシュ「X2-6070」 出典:YMTC

また、中国国務院は2020年8月、「新時代の集積回路産業とソフトウェア産業の質の高い発展を促進するための方針」を発表した。

28nm以下のプロセスで半導体を量産する経営期間15年以上の半導体企業(他にも、IC製造による営業収入が全収入の60%以上などの条件あり)は、黒字化した年から10年間の企業所得税を免除される。

また、同条件で65nm以下のプロセスの場合は、黒字化した年から5年間の企業所得税を免除され、その後の5年間は法定税率の25%が半減される。
130nm以下の場合は、黒字化した年から2年間の企業所得税を免除され、その後の3年間は法定税率の25%が半減される。

その他、設計企業やパッケージング企業も税制面で優遇するほか、自国での半導体生産に用いる原材料や装置、部品などの関税を免除するなど、強力な支援策を打ち出して半導体自給率の向上に邁進している。

3.韓国

韓国では、産業通商資源部が2021年5月に「K-半導体戦略」を発表した。

2030年に世界最高の半導体サプライチェーンを構築するという目標を掲げており、Samsung ElectronicsやSK Hynixをはじめとした半導体関連企業153社が、2030年までに約510兆ウォン(約49兆円)を投資する計画となっている。

半導体サプライチェーンを構築する地域は、板橋から平澤、天安、温陽まで、龍仁から利川まで、龍仁から清州までの3地域。
今回これらの地域を「K-半導体ベルト」と名付けた。
EUV露光や材料関連、先端エッチングといった国内開発が難しい分野においても、対内直接投資の誘致を強化する。

K-半導体ベルト
K-半導体ベルト 引用元:https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2110/22/news034_4.html

韓国政府は、主に税制面でのバックアップを担う。
具体的には、各企業のR&Dに対して2%~50%の税額を、設備投資に対して1%〜20%の税額をそれぞれ控除する。

また、8インチウエハを製造するファンドリの増設や、半導体製造装置、材料、先端パッケージング施設への投資を支援すべく、「半導体等設備投資特別資金」を新設する。
貸出金利は1%分を減免し、返済期間は5年間据え置きで、15年間分割償還となっている。

その他、半導体関連人材の育成や半導体関連産業支援に向けた「半導体特別法」の制定、自国技術のセキュリティ強化などを掲げている。

なお韓国政府は、2020年7月に半導体を含む装置・材料産業の技術開発に2022年までに5,000億円以上を投資する計画も発表している。

4.結び

今回は、中国および韓国における自国半導体産業の発展に向けた国家戦略を紹介した。

特に中国に関しては、半導体の自給自足体制の確立に向けた取り組みを進めていることは各種報道などでも周知の通りであるが、その他の国・地域においても昨今の半導体不足を受けて危機感を募らせており、関連産業を積極的に支援する姿勢を明らかにしている。

次回は後編として、米国、EUおよび日本における半導体関連の国家戦略について紹介する。

安倍’s EYE

安倍’s EYE

今回の記事は、「世界各国の半導体における国家戦略(前編)」として、中国、韓国のアジア圏に関する情報をアップさせて頂いた。

記事にある通り、各国ともに半導体を国家戦略の重要アイテムと捉えており、大規模な資金投下や税制面での優遇処置を明確に打ち出している。
いずれも半導体の自国での自給自足体制強化を挙げており、飛躍的スピードで半導体業界の競争激化が進むことが容易に想像される。

更に特筆すべきは、各国とも強化する分野や地域間連携、また支援に向けた法整備についても具体化されている事だ。

半導体の競争において最も重要となるのは、スピードとタイミングに尽きると思われる中、我が国も昨年発表された「グリーン成長戦略」のより早い時期での具体的な施策の明確化を期待したい!

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