TREND半導体業界トレンド情報

半導体業界トレンド情報

業界トレンド情報 第八弾『パワー半導体はどこで・何に使われているのか』

業界トレンド情報 第八弾『パワー半導体はどこで・何に使われているのか』

1.パワー半導体とは

新聞記事やWeb記事などで、パワー半導体、あるいはパワーデバイスという言葉を目にする機会が多くなっている。
今回は、このパワー半導体(パワーデバイス)が一体どのようなもので、どこで何に使われているのかについて紹介する。

パワー半導体とは、電力の変換に使用する半導体素子を指す。通常の半導体とは異なり、高電圧や大電流を取り扱うことが可能で、大電流に伴う発熱を抑えるため、電力損失を低減したものや排熱しやすい構造を採用したものが多い。

パワー半導体イメージ 出典:大分デバイステクノロジー

電力変換という機能を分類すると、電気を直流(DC)から交流(AC)に変換するインバータ、交流から直流に変換するコンバータ、交流の周波数を変換するAC/ACコンバータ、直流の電圧を変換するDC/DCコンバータの4つに分けられる。

一般的には、インバータエアコンといったものに耳馴染みがあるかもしれない。
インバータエアコンとは、その名の通りインバータを搭載したエアコンのことだ。

通常のエアコンは、設定温度になればモーターの動作を停止し、設定温度から離れれば再び動作させるというON・OFFの単純動作しかできず、余分な消費電力が生じてしまう。
一方でインバータエアコンでは、インバータがモーターに流す交流電流の周波数を連続的に変化させて回転数を調整できるため、設定温度に合わせた効率的な運転が可能となる。

次に、パワー半導体の種類について紹介する。主なパワー半導体としては、ダイオードやパワートランジスタ、サイリスタといったものが挙げられる。

2.ダイオード

ダイオードとは、一方向にのみ電気が流れるように制御する半導体を指す。
後に紹介するパワートランジスタやサイリスタと異なり、スイッチング機能(ON・OFFを切り替える機能)を有していない。

整流作用や検波、電圧制御、電流変換といった役割があり、種類としては一般整流ダイオードやファストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード、ツェナーダイオードなどが挙げられる。

SiCショットキーバリアダイオード「NJDCD010A065AA3PS」
SiCショットキーバリアダイオード「NJDCD010A065AA3PS」 出典:新日本無線

整流作用とは、交流電流を直流に変換する作用を指す。
家庭用電気の交流を電子機器回路に用いられる直流に変換するなど、ダイオードの機能の中でも最も一般的なものとなる。

検波は、電波から音声信号を取り出すもので、ラジオ機器などに用いられる。

電圧制御は、ツェナーダイオードが有する機能だ。
ダイオードは、逆方向の電圧が一定値を超えると電流が流れる性質を有しており、その場合電流が増えても電圧は一定となる(降伏現象)。
この降伏現象を利用して、電圧を一定に保つ機能を指す。

電流変換は、光を電流に変える機能を指す。
一部のダイオードがこの機能を有しており、太陽電池などに利用されている。

3.パワートランジスタ

パワートランジスタは応用範囲が広く、研究開発も盛んに行われており、最も一般的なパワー半導体といえる。
スイッチング機能に加えて、小さな電気を大きな電気に変換する増幅作用を有する。

HEV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)のモーターコントロール、太陽光や風力発電のパワーコンディショナー、電車、PC等のアダプター、IHクッキングヒーター、UPS(無停電電源装置)といった広い応用範囲で活用されている。

代表的なものとしては、BJT(バイポーラトランジスタ)やパワーMOSFET、IGBTが挙げられる。
このうちBJTは、消費電力やスイッチング速度などの観点から、パワーエレクトロニクスでのスイッチング用途にはあまり用いられなくなっている。

パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)は、高速でスイッチングを行えるほか、低電圧領域での変換効率も高い点を特長とする。
一方で、BJTと比較して大きな電力を扱うのにはあまり適しておらず、200V以下でのスイッチングやDC/DCコンバータなどに用いられることが多い。

IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、バイポーラトランジスタとパワーMOSFETを組み合わせたものだ。
大きな電力を扱えることに加えてスイッチングも高速となっており、両者の利点を兼ね備えている。

なお、以前の回でも紹介した通り、現在SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などを材料に用いた次世代パワートランジスタの実用化が急速に進んでいる。
これらのデバイスは、高耐圧や低損失、高速でのスイッチング、デバイスの小型化といった点を特長とする。

SiCダイオード内蔵IGBT「RGWxx65C」
SiCダイオード内蔵IGBT「RGWxx65C」 出典:ローム

4.サイリスタ

サイリスタは、ゲート(制御端子)、アノード(陽極)、カソード(陰極)と3つの端子を有する点を特徴とする。
ゲートに正電圧を印加し、電流を通すことでアノードとカソードの間に電気が流れる仕組みとなっており、電気が流れ始めた後はゲートへの電圧を止めてもそのまま流れ続ける性質を有する。

パワートランジスタのように増幅作用を有しておらず、高速でのスイッチングも行えないが、大電流を取り扱えるほかメンテナンスコストも低く抑えられる。

過電流耐量が大きく、電化製品の保護回路などに多く用いられている。
また、産業機器での電力制御や、リモコンによる信号を受けて本体を動作させる電源部なども主な用途となっている。

種類としては、SCR(Silicon Controlled Rectifier)やシリコンサージ防護素子、TVS(Transient Voltage Suppressor)といったものが挙げられる。

車載対応1200V耐圧サイリスタ「TN5050H-12WY」
車載対応1200V耐圧サイリスタ「TN5050H-12WY」 出典:STMicroelectronics

安倍’s EYE

安倍’s EYE

今回の記事は、最近注目を浴びている「パワー半導体が、実際にどこで・何に使われているか」について情報をアップさせて頂いた。

記事にも書かれているが、メジャーなところでは電気自動車のモーターコントロールや、太陽光・風力発電のパワーコンディショナー、エアコンや冷蔵庫・洗濯機に使われるインバーター等が有名であるが、本文中からパワー半導体の種類や特性をご理解頂ければ幸いです。

本年11月1日~12日に、地球温暖化対策を話し合う第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が英国・グラスゴーにおいて開催されているが、全世界の共通課題として温室効果ガスの削減は急務であり、エネルギーの需要サイドとしての“電化”は必須である。

わが国でも、昨年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言し、本年4月には2030年度における温室効果ガスを2013年度に比べ46%削減するという極めて野心的な目標を掲げている。

しかしながら電気自動車で代表されるEVやPHVの昨年度の新車販売台数は、欧州では前年度比2.4倍の133万台、中国では11%増の136万台、ドイツでは3.6倍の39万台と大きく伸びているのに対し、日本では僅か3万台と大きく差が開いているのは気掛かりである。

今後は地球温暖化対策の意味でも、パワー半導体があらゆる場所で使われる世の中になることを切に願うのみである。

業界トレンド情報 第七弾『世界的な半導体不足、何故!?』

前の記事へ

業界トレンド情報 第九弾【前編】『世界各国での半導体における国家戦略』

次の記事へ

一覧に戻る