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  • 半導体業界トレンド情報#57

生成AIブームに伴うメモリ価格の高騰と今後の展望

業界トレンド情報第58段_生成AIブームに伴うメモリ価格の高騰と今後の展望
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1. 急騰するメモリ価格

生成AIの普及拡大を背景に、DRAMやNANDフラッシュの価格上昇が加速している。調査会社TrendForceによると、汎用DRAMの契約価格は2026年第1四半期に前四半期比(QoQ)で約90〜95%上昇し、四半期ベースで過去最大の上げ幅となったという。また、第2四半期もQoQで58〜63%上昇すると予測した。加えて、NANDフラッシュの契約価格も同期で70〜75%上昇するとしている。

注目すべきは、この高騰が一時的な市況反転ではなく、構造的な需給逼迫を映している点だ。背景には、メモリメーカー(川上)が高収益のAIサーバー向け製品へ生産を振り向けることで、PCやスマートフォンを手がけるデバイスメーカー(川下)向けの供給が細るという、供給構造そのものの変化がある。

2. 価格高騰を支える供給構造

価格高騰の根底にあるのは、AIサーバー向け広帯域メモリ「HBM(High Bandwidth Memory)」と高容量サーバーDRAMへの生産シフトである。TrendForceによれば、主要DRAMメーカー3社のHBM向けウエハ投入比率は2025年末の18%から2026年末に22%、2027年末には30%へ高まる見通しだ。HBMは高付加価値である一方、ダイサイズが大きく、積層・歩留まり面でも制約が大きい。このため、ウエハ投入比率の上昇ほどにはビット供給量が増えず、結果として従来型DRAMの供給余力を圧迫している。

HBM4 出所:SK Hynix
HBM4 出所:SK Hynix

供給はSamsung、SK hynix、Micronの3社に集中している。TrendForceの2026年第1四半期データでは、3社合計のDRAM売上シェアが約9割に達しており、価格決定力は明確に供給側にある。SEMIはDRAM生産能力の年平均成長率(2025〜2030年)を4.8%程度と見込んでおり、前工程能力の拡張がAIサーバー需要の急増に追いつかない構図が、価格上昇圧力を底上げしている。台湾Commercial Timesの試算では、AI関連のDRAM需要だけで2026年の世界DRAM供給量の約20%を実質的に消費し得るという。

逼迫をさらに増幅しているのが、AIインフラ企業による長期的な供給確保の動きだ。OpenAIはStargate構想の一環として、SamsungおよびSK hynixと先端メモリの供給拡大で提携した。両社は月90万枚規模のDRAMウエハ投入を目標に生産能力を引き上げるとしている。この規模が実現すれば世界DRAM出力の最大40%に相当し得るとの試算もあり、こうした大型調達シグナルが、他の顧客による供給枠の確保や前倒し調達を促す。

NVIDIAの次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」も需要を牽引する。2026年6月には、Samsung、SK hynix、Micronの3社がVera Rubin向けHBM4供給で承認されたと報じられた。SK hynixは今後5年でウエハ能力を倍増させる計画を掲げ、HBMを軸とする供給拡大投資を加速している。ただし、こうした投資が市場全体の需給を緩めるには、なお相応の時間を要する。

NVIDIA Vera Rubin NVL72 出所:NVIDIA
NVIDIA Vera Rubin NVL72 出所:NVIDIA

3. 川下のデバイスメーカーへの波及

メモリ高騰は、PCやスマートフォンを手がける川下メーカーのコスト構造を大きく変えつつある。Gartnerによると、メモリがPCの製造原価(BOM)に占める比率は、業界平均で2025年の16%から2026年に23%へ上昇する見通しだ。さらにHPは、メモリとストレージを合わせたコストについて、自社PCのBOMに占める比率が従来の15〜18%程度から2026年度通期で約35%に達すると見積もっている。同社によれば、2026年第1四半期のメモリコストが前四半期比で約100%上昇しているという。価格引き上げ、低メモリ構成の投入、長期供給契約などで影響を緩和する方針だ。

スマートフォン市場への影響はさらに大きい。TrendForceは、2026年の世界スマートフォン生産台数を前年比(YoY)16.2%減の10.51億台と予測する。これは2月時点の10%減予測からの追加下方修正であり、メモリ高騰が当初想定を上回る影響を及ぼしていることを示すものとなっている。中国勢ではXiaomi、OPPO、vivo、Transsionが2026年の出荷計画を引き下げたと報じられており、MediaTekも需要の冷え込みを受けて先端プロセスへのウエハ投入を抑制している模様だ。Appleのティム・クックCEOも、2026年6月四半期以降にメモリコスト上昇の影響が拡大すると述べた。

コストはすでに店頭価格へ転嫁され始めている。LenovoとHPはPC価格の引き上げに動いた。Gartnerは500ドル未満のエントリーPC市場が2028年までに消滅すると予測し、IDCもスマートフォンで100ドル未満の端末が経済的に成立しにくくなると指摘する。メモリ高騰は単なる一時的な部材高ではなく、低価格帯デバイスの製品設計・価格帯・販売数量そのものを左右する要因になりつつある。

4. 今後の展望と日本企業

価格の正常化時期については慎重な見方が大勢だ。エンタープライズSSDの本格的な生産能力拡張は2027年後半以降とみられ、それまではAIサーバー需要と供給制約の間で価格上昇圧力が持続する見込みである。正常化は早くても2027年後半から2028年にかけて段階的に進むとの見立てが大勢で、AI需要がさらに上振れすれば、価格上昇局面はいっそう長期化しかねない。

日本企業は、この局面で供給側と調達側の両面に立つ。供給側を見ると、日本は汎用DRAM事業から事実上撤退しており、国内で最先端DRAMを開発・量産する主要拠点は米Micronの広島工場となっている。同社は広島工場で1γ世代DRAM向けEUV導入を進めるほか、HBM向け新工場を建設し、2028年ごろの出荷開始を目指すと報じられている。一方、日本勢ではキオクシアがNANDフラッシュで存在感を維持しており、NAND価格の上昇は長らく市況低迷に苦しんだ同社にとって大きな追い風となっている。同社の2026年3月期の連結売上収益は2兆3,376億円、Non-GAAP営業利益は8,762億円となった。2年連続で売上収益・営業利益ともに過去最高を更新している。

Micron 広島工場 出所:Micron Technology
Micron 広島工場 出所:Micron Technology

一方、調達側に回る多くの企業にとって、メモリ高騰はDX投資やIT調達コストを静かに押し上げる「見えない増税」となる。価格下落を待つ姿勢ではなく、前倒しの投資判断と、上昇したコスト構造を織り込んだビジネスモデルの戦略的な見直しが求められる。

安部’s EYE

安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「生成AIブームに伴うメモリ価格の高騰と今後の展望」と題してアップさせて頂く。
半導体の中でも一般の方でも一番身近なものの代表格となるのがメモリ半導体だと思うが、その価格については上下動が激しく、ある意味“博打”的な要素の多い製品であり、取り扱いをしている企業においても需給バランスの“読み”を間違えれば、あっと言う間に大きな赤字を出してしまう非常にコントロールの難しい製品の筆頭格である。しかし今般のAIブームにより、大きく状況が変わって来た内容について本文で説明している。

従来のメモリ製品はPCやスマホ向けと言った川下向けへの供給がメインであり、川下側の企業が生産数量や価格を支配していた訳だが、AIの普及により高収益のAIサーバー向けとなる川上側へ生産を振り向けたことで、立場が逆転する結果になって来たことについて書いている。

最近色んなシチュエーションで“ゲームチェンジ”なる言葉を耳にする方も少なくないと思うが、今回のメモリもAIの登場によりゲームチェンジとなった製品である。
以前はメモリは儲かるという事で日本企業が世界を席巻していた時代もあったが、莫大な設備投資と研究開発投資、更に価格の変動に耐え切れず、多くの企業が手放した結果、今や世界でも限られた数社のみしか生産が出来なくなってしまったことも、今回のゲームチェンジの引き金になったとも言える。

今や日本国内には、DRAMのMicron、NANDフラッシュのキオクシア、更にはAIチップのTSMC・Rapidusと言ったオールキャストが揃っており、世界有数の半導体大国になりつつある。
失われた30年を取り戻すのは並大抵ではないが、このチャンスを逃す訳にはいかない!

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