- 半導体業界トレンド情報#59
材料メーカーに課される先端半導体パッケージの技術的課題
1. 性能向上の主役となった先端パッケージと材料への要求
生成AIの急速な普及により、半導体の性能向上の主戦場は微細化からパッケージング(後工程)へと移りつつある。チップレット構造や2.xD/3D実装といった技術の活用が進み、パッケージ自体の大型化と複雑化が進展している状況だ。

こうした構造の高度化に伴い、封止材、アンダーフィル、層間絶縁材、ダイボンディング材といった組立材料には、従来にない厳しい要求が課されている。3Dパッケージでは、チップの積層や異種材料の組み合わせが増えることで、発熱の処理、パッケージ反りの抑制、工程数の増加に伴う製造コスト、さらに内部欠陥の検査精度といった課題が顕在化する。これらは単一の材料だけで解決できるものではなく、設計段階からプロセス条件、材料選定までを一体で最適化することが重要になる。
2. 熱マネジメントと反りへの対応
先端パッケージにおける最大の課題が熱と反りである。チップの高集積化により発熱密度が増大する一方、シリコンチップ、インターポーザー、有機基板、封止樹脂といった熱膨張係数(CTE)の異なる部材を積層するため、製造時の加熱・冷却の過程で反りが発生しやすい。パッケージの大型化や、積層のためのチップ薄化はこの傾向をさらに助長する。反りは接合不良や歩留まり低下に直結するため、低熱膨張係数と高い剛性・耐熱性を備えた材料設計が不可欠となる。
熱マネジメントの面では、チップで発生した熱を効率よく外部へ逃がす放熱経路の確保が材料メーカーの腕の見せどころとなる。放熱性を高めるには、チップとヒートスプレッダーなどの放熱部材の間で熱の流れを妨げない材料設計が欠かせない。TIM(熱伝導界面材料)や高熱伝導タイプの封止樹脂では、界面で生じる熱抵抗をいかに小さくするかが重要となる。同様に、キャピラリーアンダーフィルやダイアタッチフィルムについても、接合信頼性だけでなく、パッケージ全体の熱経路の一部として機能させる視点が求められる。
各社の対応も加速している。住友ベークライトは2026年4月、AI半導体向け先端パッケージングに対応する液状封止材「EME-L」シリーズのサンプル提供を開始した。低反り性と高信頼性、必要な加工性を両立した材料として、2027年の認定採用を目指す。また、ナミックスはHBM(広帯域幅メモリ)向けに放熱性や生産効率の向上、反り制御に優れる液状封止材(LCMUF)を展開している。汎用品からの置き換えが進むこの領域は、材料メーカーにとって課題対応力がそのまま収益機会につながる主戦場となっている。

3. HBM高積層化が突き付ける接合材料の課題
AIサーバーの中核部品であるHBMでは、DRAMの積層数増加が材料に極めて高いハードルを課している。JEDEC(半導体技術協会)のHBM4規格は最大16層のDRAM積層に対応しており、パッケージの公称厚は775μmとされる。HBM3Eの約720μmから増加幅は約55μmにとどまるため、16層品ではDRAMダイを30μm前後まで薄型化する実装例もみられる。
HBM3(第3世代広帯域幅メモリ)およびHBM3E(HBM3拡張版)で量産実績のあるDRAMダイの積層・接合プロセスは、主にMR-MUF方式(マスリフロー・モールドアンダーフィル方式)とTC-NCF方式(熱圧着・非導電性フィルム方式)に分けられる。SK hynixが採用するMR-MUFは、積層したダイ間のマイクロバンプを一括リフローで接続した後、液状エポキシモールド材でダイ間の隙間を充填・封止する方式だ。一方、Samsung ElectronicsやMicronが採用するTC-NCFは、ダイ間に絶縁接着フィルムを配置し、熱と圧力を加えてダイを順次接合するものとなっている。矢野経済研究所の2024年版調査によると、HBMなどの3D積層向けNCFではレゾナックが市場を事実上独占しているという。同社は生産能力の増強も進めており、日本の材料メーカーがHBMサプライチェーンで重要な位置を占める一例となっている。

一方、次世代では銅電極同士を直接接合するハイブリッドボンディングへの移行が視野に入る。ただしHBM4の12層品では、量産実績、コスト、生産性の面で優位性を持つTC-NCFやAdvanced MR-MUFが引き続き主流であり、ハイブリッドボンディングはメーカー各社が並行して開発・評価を進める段階にある。16層以上への高積層化や接続ピッチの微細化に伴い、その重要性は高まると考えられるが、Advanced MR-MUFなど既存方式の改良も進んでおり、本格的な移行時期はメーカーや製品世代によって異なる可能性が高い。このため材料メーカーには、NCFやMUFの低反り・高放熱化を進める一方、ハイブリッドボンディングに必要な絶縁膜、CMP(化学機械研磨)、洗浄・表面処理材料にも対応する二方面の技術開発が求められる。
4. 微細配線への対応と共創型開発の広がり
パッケージ基板の分野では、高密度化に伴ってL/S(Line/Space:配線幅/配線間隔)15/15μm級の微細配線が実用化され、次世代品では10/10μm以下への対応も求められている。配線の微細化に際しては、銅配線の形成精度に加え、絶縁層との密着性、層間位置合わせ、ビア加工、絶縁信頼性などの確保が課題となる。層間絶縁材では、味の素ファインテクノの味の素ビルドアップフィルム(ABF)が事実上の業界標準となっている。同社によると、ABFは発売以来、対象市場で95%を超える世界シェアを維持しているという。微細配線、高速伝送、低損失化、大型・多層基板の反り抑制などに対応した製品開発を続けている。
こうした複数の材料・工程にまたがる課題を解決するため、材料、装置、基板、設計などの企業が共同で開発・評価する取り組みも広がっている。レゾナックは、日米12社が参加する次世代半導体パッケージ開発コンソーシアム「US-JOINT」を設立。2026年4月20日にシリコンバレーにてR&Dセンターを開設した。材料や装置を一つの拠点に集めることで、最新パッケージの概念実証期間を従来の約6カ月から最短1カ月へ短縮することを目指している。

また、同社は国内においても、日本、米国、シンガポールなどの27社が参加する共創型評価プラットフォーム「JOINT3」を設立した。茨城県のレゾナック下館事業所に515×510mmのパネルレベル有機インターポーザー試作ラインを構築し、2026年中の稼働開始を計画している。実製品に近い共通試作構造を用いることで、材料、装置、設計ツールを横断した開発の迅速化を図る。
先端パッケージの大型化、高密度化、高積層化は、パッケージ材料に対して、放熱や反り抑制、微細加工、低損失、接続信頼性などへの対応を求めている。封止材や層間絶縁材は、単なる保護・絶縁材料ではなく、パッケージの電気特性、熱特性、信頼性、製造歩留まりを左右する機能材料として重要性を増している。材料メーカーにとっては、デバイスメーカー、ファウンドリ、基板・装置メーカーとの開発初期からの連携を通じて採用を獲得し、プロセス上の標準的地位を築けるかが、中長期的な競争力を左右すると考えられる。
安部’s EYE



今回のトレンド情報は、「材料メーカーに課される先端半導体パッケージの技術的課題」と題してアップさせて頂く。
半導体の性能向上については“微細化”が最も重要なファクターであったが、その微細化に限界が近づく中、その主戦場がパッケージング(後工程)へ移行して来ているのはこれまでも述べてきた。
最先端のチップを搭載するパッケージにおける最大の課題が“反り”と“熱”になる。
チップの高集積化により発熱密度が増大する一方、数種類の熱膨張係数(CTE)の異なる部材を積層するため、製造時の加熱・冷却の過程で反りが発生しやすい。この反り問題を解決するためにも、低熱膨張係数と高い剛性・耐熱性を備えた材料設計が不可欠となる。
熱マネジメントの面では、チップで発生した熱を効率よく外部へ逃がす放熱経路の確保が材料メーカーの腕の見せどころとなる。
先端パッケージには様々な材料が用いられるが、個々の最適解ではなく全体としての最適解を見い出す必要があり、各社の協調が重要になって来ている。
ここにきて、次世代半導体パッケージ開発コンソーシアム「US-JOINT」や、共創型評価プラットフォーム「JOINT3」等が設立されており、材料や装置を一つの拠点に集めることで、最新パッケージの概念実証期間を従来の約6カ月から最短1カ月へ短縮することを目指す動きも始まっている。
デバイス、装置、材料を横断した“協調”・“共創”・“連携”した開発が重要になってくる中、物理的な関連企業の集積も大事なポイントになって来そうだ。