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業界トレンド情報 第三十六弾 世界トップシェアのパワーデバイスメーカー・Infineon

業界トレンド情報 第三十六弾 世界トップシェアのパワーデバイスメーカー・Infineon

1.主な企業動向

ドイツのノイビーベルグに本社を構えるInfineon Technologies(以下、Infineon)は、欧州最大の半導体デバイスメーカー(2023年度時点)だ。
パワーデバイスでは世界最大のシェアを有している。

2023年度の売上高は163億900万ユーロを記録した。
前年度と比較して、14.7%の売上増となっている。
2020年度の売上高と比較すると約1.9倍に達した。

主力の車載製品の売上高が前年度比26.5%増の82億4,200万ユーロと拡大し、全体の売上増を牽引している。

その他のセグメント売上高は、パワー・センサーシステムが37億9,800万ユーロ(同6.7%減)、グリーンインダストリーパワー(電力変換システム製品)が22億500万ユーロ(同23.2%増)、通信セキュアシステムが20億4,600万ユーロ(同12.3%増)となっている。

売上の増加に伴って、設備投資も増加傾向となっている。
2023年度の設備投資は29億9,400万ユーロ。
前年度比で29.6%増、2020年度比では約3.3倍の規模に達している。

ドイツ・ドレスデンやマレーシア・クリムにて新棟の建設を、インドネシア・バタムでも新工場の立ち上げを進めている。
インドネシア工場は、マレーシアのOSAT・Unisemより2022年に取得したものだ。
車載製品の組み立てやテスト工程向けにラインを立ち上げる計画となっている。

インドネシア・バタム工場 出所:Infineon

企業買収も積極的に行っており、2015年にInternational Rectifier(IR)を30億ドルで、2020年にはCypress Semiconductorを90億ユーロで買収した。
これらの買収により売上規模が拡大している。

2023年は、カナダのファブレスGaNパワーデバイスメーカー・GaN Systems、エッジAIなどを手掛けるスウェーデン・Imagimob AB社、UWB技術を保有しているスイス・3db Access社を買収した。

一方で、2023年にHiRel DC-DCコンバーター事業をMicross Componentsに売却。
また、2024年には、フィリピン・カビテ工場と韓国・天安工場をASEに売却すると発表した。

SiCパワーデバイスに力を入れており、Wolfspeedやレゾナック、SKシルトロン、SICC、TanKeBlueといったSiCウエハー・材料メーカーと供給契約を締結。
また、2018年には、SiCウエハーの分割技術「Cold Split」を有するSiltectraを買収した。
Cold Splitは、処理を終えたSiCウエハーを水平方向にスライスし、2枚のウエハーに分割する技術となっている。

2.主な製品ラインアップ

Infineonは、IGBTやパワーMOSFETといった主力のパワーデバイスを筆頭に、マイクロコントローラー(以下、MCU)やLEDドライバIC、センサー、パワーマネジメントIC、メモリ、ASICなどさまざまな製品をラインアップに揃えている。

代表的なパワーデバイスとして、EV(電気自動車)やハイブリッド車といった車載向けのパワーモジュール「HybridPACK Drive」を販売している。
コンパクトな6パックモジュールで、2017年に発表したものだ。

1200V品と750V品のいずれかを選択できる。
2021年には、SiC MOSFET「CoolSiC」バージョンも発表した。

また、2023年には、第2世代となる「HybridPACK Drive G2」を発表。
第1世代品と同じ占有面積を保ちながら、主力が最大300kWに向上した。
次世代相電流センサーの統合オプション、オンチップ温度センサーといった新機能も採用している。

出所:Infineon

GaNデバイスとしては、GaN HEMT「CoolGaN」を展開。
100〜700V、4〜150Aをラインアップに揃えている。
GaNを用いることで、システム効率や電力密度を向上させた。

USB-Cアダプター・充電器、サーバー・通信用SMPS、48 V配電、太陽光発電およびエネルギー貯蔵システム、ロボット、モーター制御、ドローンといった用途に適する。

MCUは、車載向けとしてフラグシップMCU「AURIX」や「TRAVEO」を展開。
Techinsightsの調査によると、Infineonは2023年に車載MCUの世界市場で約29%のシェアを占め、初めて世界第1位の座を獲得したという。

車載向けフラグシップMCU「AURIX」 出所:Infineon

なお、非車載MCUは、2024年に「PSoC」ブランドに統合する方針を明らかにした。
PSoCは、もともとCypress SemiconductorのMCUファミリーの名称だ。

2020年の買収に伴い、Infineonが同ファミリーを引き継いでいる。
今後は、IoT向けのエッジAI用MCU「PSoC Edge」や「PSoC Control」、「PSoC Connect」などを展開する方針となっている。

安部’s EYE

安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「世界トップシェアのパワーデバイスメーカー・Infineon」についてアップさせて頂く。

ドイツに本社を構えるInfineon Technologiesは、パワーデバイス分野において世界最大のシェアを有している企業である。
世界半導体企業売上高ランキングにおいても、2023年度では第9位の位置まで躍進している成長企業である。

同社の強みは何と言ってもEV(電気自動車)やハイブリッド車といった車載向けのパワー製品であり、次々に先行品を世に出すことで圧倒的シェアを獲得している。

もっとも同社はパワーデバイス以外にも、マイクロコントローラーやLEDドライバIC、センサー、パワーマネジメントIC、メモリ、ASICなどさまざまな製品をラインアップに揃えているが、各分野における事業展開の進め方には目を見張るものがある。

急成長の裏には積極的な企業買収も奏功しているが、同時に事業や工場の売却も行っており、大企業にありながらも会社全体を見渡した経営資源の有効活用の上手さは、更なる成長を予感させられる。

世界的規模で事業展開をしているグローバル企業でも、事業戦略の綿密な立案から自社の経営資源をいかに有効活用できるかを常に把握した上での、間髪入れない判断・決定をもった経営を行っている訳であり、規模はともかく企業経営をする身にとっては、マネジメントを学ぶべき企業の一つであると言える。

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