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業界トレンド情報 第二十四弾『世界の総発電量15%をも占める予測のデータセンター。その市場動向と課題とは?』

1.データセンターとは?

データセンターとは、サーバーやネットワーク機器といった装置を設置、運用することに特化した建物の総称を指す。
サーバーを収納するためのラックが並び、大容量電源や高速回線、冷却装置といった設備が整ったスペースとなっており、耐震・免震構造や厳格なセキュリティを備えているケースが多い。

データセンターイメージ 出所:日本データセンター協会(JDCC)

データセンターイメージ 出所:日本データセンター協会(JDCC)

データセンターは、ハウジングとホスティングの2つを主な事業としている。

ハウジングとは、顧客企業のサーバーをデータセンター内に設置して運用することを指す。
データセンター側は、顧客にスペースやラック(サーバーを収容する棚)、ネット回線、電源などを貸与し、顧客が自ら機器の運用や保守を行うこととなる。

一方、ホスティングとは、データセンター側のサーバーやネットワーク機器を借りて、一定の容量の範囲内で利用することを指す。
レンタルサーバーとも言われる形態で、機器の運用や保守を顧客側で行わなくてもよいことがメリットとなる。

一方で、サーバーが落ちるなどのトラブルがあった際は、データセンター側の復旧処理を待つしか手立てがなくなる。
また、共用サーバーを使用している場合、他のユーザーがサーバーに負荷を掛けることで処理速度が遅くなるケースもみられる。

2.データセンターの市場動向

IT調査会社のIDC Japanは2021年10月、国内データセンターサービスの市場予測を発表した。
これによると、2021年の同市場規模は対前年比11.6%増の1兆7,341億円(見込)で、2025年には2兆7,987億円に達する予測となっている。

2020〜2025年の年間平均成長率(CAGR)は12.5%となる計算で、高成長市場といえるだろう。

国内データセンターサービス市場 推移予測 出所:IDC Japan

国内データセンターサービス市場 推移予測 出所:IDC Japan

同社は、ITインフラのリモート運用やオンラインサービスの利用拡大がデータセンター利用を後押ししているとした。
また、ホールセールコロケーション(クラウドサービスプロバイダーに大規模なデータセンター設備を貸与するタイプのサービス)も伸びており、新規参入する事業者も増えてきていることから、同分野の市場拡大も予測されるとしている。

また、同社は2022年4月、国内データセンターの延床面積予測も発表した。
これによると、国内データセンター延床面積の合計は2021年末時点で263万400㎡となっており、2026年には390万5,100㎡に達すると予測している。
2021年~2026年のCAGRは8.2%となる。

特に2019年頃からは、ハイパースケールデータセンターと呼ばれる非常に大規模なクラウド向けデータセンターへの需要が高まっており、シンガポールや北米に本社を置いたハイパースケールデータセンター事業者の参入が多くみられる。

国内ハイパースケールデータセンター* 延床面積推移予測 出所:IDC Japan (*サーバー室面積5,000㎡以上かつ電力供給量が6キロボルトアンペア/ラック以上で、テナントがクラウドサービス事業者であるような事業者データセンターが対象)

国内ハイパースケールデータセンター* 延床面積推移予測 出所:IDC Japan
(*サーバー室面積5,000㎡以上かつ電力供給量が6キロボルトアンペア/ラック以上で、テナントがクラウドサービス事業者であるような事業者データセンターが対象)

3.データセンターの設置場所

データセンターはどのような場所に設置されているのだろうか。
実は、データセンターの詳細な所在地は、セキュリティ上の理由により公開されていないケースがほとんどだ。

日本データセンター協会(JDCC)は、国内に所在するデータセンターのリストを公開しているが、こちらに記載された所在地も、市レベルもしくは県レベルまでに留まっている。

データセンター一覧 出所:日本データセンター協会(JDCC)

データセンター一覧 出所:日本データセンター協会(JDCC)

選ばれる場所としては、都会からアクセスが容易で安定した電源供給が望める、比較的土地コストが安いなどといった点が重視されているようだ。
また、大規模なデータセンターが集積している千葉県印西市は、これらの条件を満たしている上、海底ケーブルの引き上げ地点が多くある茨城・房総沿岸に近いという点もメリットとされている。

4.データセンターにおける今後の課題

クラウドや5G通信などの普及により、ますますネットワーク通信量が増加している昨今において、データセンターへの性能要求は年々高まっている。
一方で、大容量化に伴い懸念されるのが消費電力だ。

TDKは、2030年の世界におけるデータセンターのエネルギー消費量が、およそ4兆7,000億kWh規模に達するものと予測している。
これは2022年の9.4倍に値する規模で、世界の総発電量の15%を占めるという。

データセンターのエネルギー消費量予測(世界) 出所:TDK

データセンターのエネルギー消費量予測(世界) 出所:TDK

データセンターでは、高性能なサーバーを稼働させるために多くの電力を要するほか、サーバーが発熱することで高温となるため、冷却装置にもさらに電力を消費する必要が生じる。

これを抑えるためには、サーバーに用いる半導体や電子部品の低消費電力化、発熱抑制を目指した研究開発の進展や、データセンターにおいてエネルギー損失が少ない直流給電や効率の良い空調システムを導入するなどといったことが必要となる。

なお、北海道美唄市に位置する「ホワイトデータセンター」では、市内の道路除雪で集めた雪を用いてサーバーを冷却するというユニークな取り組みを実施している。
さらに、太陽光や水素、バイオマス発電といった再生可能エネルギーを利用しており、CO2排出量ゼロを実現した。

また、食糧生産棟も設けており、サーバーから生じた廃熱を利用して野菜や魚介類の養殖を行っている。

ホワイトデータセンターのイメージ 出所:ホワイトデータセンター

ホワイトデータセンターのイメージ 出所:ホワイトデータセンター

安部’s EYE

今回のトレンド情報は、「世界の総発電量15%をも占める予測のデータセンター。その市場動向と課題とは?」について、アップさせて頂く。

記事にある通り、国内におけるデータセンターの2020年~2025年のCAGRは12.5%と予測されており、今後の高成長市場として注目株である。

現状の電子データ爆発を考えると、記事に書かれている2025年度の市場規模予測2.8兆円を更に凌駕する規模になるのではないかと思われる。
またデータセンター設置の延床面積も記載されているが、これほどの急拡大に対応させる土地を確保していくのも大きな課題になってくると思われる。

今や電子データは、個人や企業にとって重要かつ必要不可欠な財産であり、セキュリティ面での管理は相当に手厚く実施することが必須であり、データセンターの拠点はある意味“秘密基地”の様相を呈しているが、自然災害等も考慮したBCP対応と情報漏洩対応をアンドで行わなければならず、難しいハンドリングになってくると思われる。

一方で、データセンターは想像を絶する電力が必要であることを忘れてはならない。
2030年の世界におけるデータセンターのエネルギー消費量が、2022年度比9.4倍となり世界の総発電量の15%を占めると予測されている。

信じられない規模の電力となるが、SDGs・カーボンニュートラルの観点から、どうやってこれだけの電力を作っていくのか、改めて世界規模で歩調を合わせる必要があると思われる。

利便性の追求と持続可能社会の両立、これからの人類に突き付けられた難題をどうやって克服していくか、国境を越えた取り組みが必要になっていると思う。

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